相模原事件裁判、1月末の植松被告と接見した2組~死刑を予感し控訴の意志も無いが、死刑は不当と感じている
その他の障害・病気相模原障害者殺傷事件の植松聖被告に対する第一審が現在着々と進んでいます。ペースアップしていく公判も2月5日までのインターバルを迎え、傍聴に来た遺族や関係者に形式上の休息が訪れました。
前回に個人的な考察として、働いているうちに「ありがとう」を言わない(言えない)入所者が目に付くようになり、それが肥大化して「意思疎通の出来ない者は滅ぼすべし」となったのではと組み立ててみました。
それはさておき、1月の終わりに2組の団体が植松被告と接見してレポートを書きました。片方は30日に訪れた作家の雨宮処凛(かりん)さんで、もう片方は31日に訪れた神奈川新聞です。
神奈川新聞に明かした3つのこと
31日に接見した神奈川新聞の記者に対し、植松被告は「弁護団」「遺族への謝罪」「死刑」の3つについて心境や状況などを述べました。
弁護団については、一時主張の対立から解任手前まで及んでいました。現在は弁護側の主張をある程度受け入れており、折り合いをつける姿勢でいます。
遺族への謝罪については、前に篠田さん(月刊「創」編集長)との接見で初めて被害者への謝意を口にするという変化がありました。初公判で指を噛み切ろうとしたのも「言葉で表せない誠意を示すため」と改めて言及しています。一方、自らの犯罪について「間違っていない」とする主張は一貫しており、「障害者を養うのが生き甲斐だと感じてほしくはない」と述べました。
死刑については「死刑になるような罪ではない 。不当だ。」と抵抗の意志を示しています。その一方、「第2回公判では裁判官が目を合わせてくれなかった。死刑になるかもしれない。」とも言及しています。また、たとえ死刑判決でも控訴はせず第一審で決める意向は現在のところ変わっていません。
「ヨダレ垂らしてヘラヘラ笑うな!」
30日に接見した雨宮さんは、これまでに何度か面会したという人についていく形で植松被告に会いました。第一審が始まるまでにも「接見についてこないか?」と誘われることはあったのですが、「植松被告が怖いから」という理由で避けていたそうです。
しかし、裁判の傍聴に計4回同席したことで被告の尋常ならざる精神状態を実感した雨宮さんは、面会へ同行する機会に初めて乗りました。植松被告と直接対話する必要性を感じたためです。
死刑や控訴、初公判での自傷については神奈川新聞や篠田さんに話した通りの回答でした。そして、同行者が「今でも自分が正しいと思っているか?」と踏み込んだ質問をすると、植松被告は姿勢を正し「方法は多少手荒だったが、自分の考えそのものは正しい。」と即答しました。
措置入院のきっかけとなった衆議院議長への手紙についても「あれは恥ずかしかった。文章が荒っぽかったから」と、暗に「障害者への殺意自体は恥ずべきことではない」と示唆する始末です。
更には同行者と激しい問答になりました。
同行者「人の生きる目的は何だと思う?」
植松「幸せになる事。楽しむ事。」
同行者「その権利を(障害者から)奪っていいとでも?」
植松「障害者に人生を楽しむ権利はない。」
同行者「君は間違っている。」
植松「間違っているのはお前たちだ。世界には不幸な境遇の人が大勢いるのに、障害者はヨダレを垂らしてヘラヘラ笑って生きている。そういうのはおかしい」
雨宮さんの同行者は中東アジアへ取材したこともあるベテランジャーナリストです。そんな彼に対し植松被告は「お前は中東で何を見てきたんだ。従軍経験がないからか知らないが、お前の考えは甘すぎる」などと説教しだしました。この情景を雨宮さんは「シリアルキラーがベテランジャーナリストに説教している構図」と振り返っています。
ひとしきり説教した植松被告は、「お前も大麻を吸わなければ分からないか…」と呆れた様子で話題を中断しました。
権力者や有名人への憧憬
植松被告には強烈な権威主義とルッキズムが刷り込まれているようでした。ルッキズムに関しては事件前に整形手術をしている他、儀式的な見た目にも拘っているようで、その拘りが初公判での自傷に繋がったように思えます。
好きなアーティストを聞かれると、「きゃりーぱみゅぱみゅとブルーハーツ」と答え、前者は「イルミナティだから」という要領を得ない理由でしたが後者は「カッコいいから」という理由でした。被告が「カッコいい」に拘るのは方々で指摘された通りです。
雨宮さんが植松被告から強く感じたのは権威主義です。当時は大統領選の真っ只中だったトランプ大統領、自分の野望を受け容れると信じていた安倍総理、他にはフィリピンのドゥテルテ大統領などに傾倒しているようでした。それを改めて問うと、「社会のため身を粉にして働いている素晴らしい方々。自分と比べるのは畏れ多く、最大級の尊敬に値する。」と答えており、トランプ大統領らを畏敬しているようでした。
衆議院議長へ殺害計画の手紙を出したことで措置入院となったとき、法廷では「措置入院は政府の返答だと感じた」と述べていたようです。それについて雨宮さんが「否定されたと感じたの?」と問うと、植松被告は「やるなら一人でやれという意味に解釈した」と答えていました。
畏敬する権力者こそ自らの野望を理解してくれる存在と固く信じている節があり、面と向かって明らかに「NO」と言われない限りは都合よく解釈していたというのでしょうか。一線を越えた過激なアイドルオタクにありそうな思考です。
本当に控訴しないのか
現在のところ「どのような判決が下っても控訴はしない」という意志表示をしている被告ですが、この辺りは判決が下るまで分からない所です。有言実行で控訴を取り下げるかもしれませんし、気が変わって控訴するかもしれません。
主張が噛み合わない弁護団とも歩み寄る姿勢を見せており、検察側としては一瞬たりとも油断できない状況が続くでしょう。被告は死刑の回避を望んでおり、弁護団も無罪を主張する強気さです。互いに折り合いがつくと本気で抵抗してくることが予想されます。
参考サイト
「雨宮さんに聞きたいんですけど、処女じゃないですよね?」植松被告は面会室で唐突に言った(BuzzFeed Japan)
https://headlines.yahoo.co.jp
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