就労継続支援B型事業所、工賃と満足度は無関係という調査結果が出る
その他の障害・病気就労継続支援B型事業所(以下、作業所)について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。私はあまりいいイメージがありません。柔軟な通所計画だけが取り柄なのですが、A型などへのステップアップを目指すとなると週5強制となって唯一の長所は潰れてしまいます。
ごく一部では高度だったり個性的だったりする作業所もありますが、凡百の低工賃軽作業では毎日通うと鬱積してくるのではないかと思います。この他B型作業所については過去の記事で色々とお話ししていますので是非読んでみてください。
さて、作業所へ通う人の満足度について民間団体が調査しており、最近その結果が公表されました。作業所にとって大事なのは工賃でしょうか。或いは別の何かでしょうか。
工賃は満足度に直結しない
調査した全国精神障害者地域生活支援協議会によると、工賃の額と満足度に相関は見られなかったそうです。月々の平均工賃に応じて「8,700円未満」「8,700円以上15,000円未満」「15,000円以上」の3群に分け満足度を集計(32点満点)すると、最も高い群の中央値(数値を小さい順に並べて真ん中にくる値)が1点多いだけで有意な差はありませんでした。
作業所の工賃は年々じわじわと上昇しており、2018年度の平均工賃は16,118円と既に調査内の高い群を上回っています。しかし、工賃の分布図(別紙3、PDFファイル)によると平均工賃未満の作業所が多く、ごく少数の作業所が月3万以上出して平均値を上げている実情が浮き彫りとなっています。
つまるところ、作業所の工賃が高いか安いかで満足度を論じても仕方がないのです。月収と呼ぶのも烏滸がましい額であることに変わりはないのですから。
依然、厚労省から「作業所は工賃を上げろ」と鞭が飛んできています。しかし、作業所が工賃を上げるには報酬の高い仕事を積極的に受注する必要があり、唯一の長所と言っていい柔軟な通所は犠牲となるでしょう。作業所の工賃を上げるより、より収入の高いA型や一般へ行きやすくするほうが近道ではないかと思います。
職員が一人ひとりをよく見ること
では何が作業所の満足度に最も寄与しているのでしょうか。調査によれば、満足度の高い群は低い群に比べて職員から個別支援を受けた時間が月平均592分も長かったとのことです。紋切型の対応ではなく利用者一人ひとりに合わせた支援が評価されるという訳ですね。要するに職員の態度が大事なわけです。
個別支援の具体的な内容は作業所によりけりでしょうが、逆に紋切型の対応しかしない職員が低評価なのは合点がいきます。例えば、利用者なら誰が相手でも子ども扱いや友達扱いで接してくる職員です。毎日顔を合わせる人間から幼児のように扱われたり馴れ馴れしくされたりしては不満が募るばかりでしょう。
利用者それぞれの体調は勿論、A型や一般就労に進みたいかなど将来の希望も把握して個別に違ったアプローチをするのが、職員に求められる姿勢といえます。それは一人の職員に幾つもの顔を持たせるより、様々な信念や方針の職員を雇用する方が現実的でしょう。就労を目指す利用者には就労をサポートしたい職員を、ただ安穏と過ごしたいだけの利用者には家族か友達の代わりに接したい職員を配置する感じがよいと思います。
「最後の受け入れ先」化が問題
真に憂慮すべきは作業所からの就職率が1%程度しかない現状です。作業所から次へ進めない以上、「最後の受け入れ先」として定着せざるを得ない事情があるのではないでしょうか。
本来、就労支援である以上は障害者の一般就労に貢献せねばなりません。ところが実際には同じ利用者が何年も所属し続けているのです。職員の就労支援策といえば利用者の一般就労を妨げない事くらいで、作業所から就職するならば独力で頑張るか就労移行支援に移るかの二択となります。
作業所によっては就労の芽がない障害者に居場所と勤労体験を与えることだけを目的とした所もあります。別に就労を重視しないスタンスであろうとも、破綻しない限り経営方針は自由です。ただ、毎日作業所で職員と接し毎月工賃を貰う以上、その質や量は厳しく問われます。
毎月の工賃はおよそ収入と呼べる額ではなく、毎日顔を合わせる職員が子ども扱いしてくる場所に、何年も通い続けたいとは思わないでしょう。しかし短期間で退所し次のステップへ進めるならば、工賃の低さも職員の態度も一瞬の痛みとして受け流せる可能性があります。
就労支援を謳う以上、一般就労への貢献が求められますが、実際は安穏とした居場所を目指す作業所のほうが多いです。何年も身を置く「居場所」になろうとする方が却って満足度を高めにくいと思うのですがいかがでしょう。
余談:都道府県ごとの平均
2018年度の工賃平均額について厚労省のデータを参照しましたが、そこには都道府県別の平均も集まっていました。番外としてそちらのデータについても偏差値を出しながら少しご紹介します。
①最高額
平均工賃が最も高いのは徳島県で、その額は22,235円でした。全国平均を6,117円上回っており、偏差値は78.2でした。
次に高いのは福井県の21,829円で、全国平均より5,711円多く偏差値は76.3です。平均工賃が2万円を越えていた(同時に偏差値70超も)のはこの2県だけでした。
②最低額
反対に最も安い工賃だったのは山形県で、偏差値は29.4と唯一30を割りました。山形県の平均工賃は全国平均を4,467円下回る11,651円でした。最高額の徳島県とは差額にして10,584円です。
次に安いのは大阪府の12,009円で、全国平均より4,109円低く偏差値も31.1と30前後に留まっています。偏差値40未満はこの1府1県だけで、3番目に安い青森県は偏差値40.9でした。
③その他
中央値となる24位は香川県の16,337円(平均より259円高、偏差値51.2)
平均より低いのは27位の東京都(16,078円、偏差値49.8)以下1都2府18県。
偏差値60以上は11位の山口県(18,533円、偏差値61.1)以上1道10県。
A型事業所の平均賃金は最も安い宮崎県で62,776円。B型最高額である徳島県の約2.8倍
参考サイト
障害者就労B型 高工賃と満足度は無関係 民間調査|福祉新聞
https://www.fukushishimbun.co.jp
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