上手に話せない~吃音症について
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みなさんの身近に話し始めや、話の最中によく詰まってしまう人はいませんか。それは「吃音症」と呼ばれる症状かもしれません。吃音症についての説明を当事者である私の体験談を元に書いていきたいと思います。
吃音症とは
吃音症をご存知でしょうか。話し始めや、話している最中に言葉に詰まってしまい、円滑に話せません。以前は「吃り」と言われていました。最近では吃りは差別的な意味も含まれているとして、「吃音症」と言われています。およそ100人に1人が吃音症を持っていると言われ、それほど珍しくない症状です。有名人の名前を出すとミュージシャンのスキャットマン氏、アナウンサーの小倉氏は吃音症と公言しています。また、最近話題になりました大統領選挙に立候補したバイデン氏も吃音症と公言しています。
吃音症には3つの症状があります。
言葉を繰り返してしまう連発「お、お、おはようございます」
一時的に言葉を発することができなくなる難発「・・・おはようございます」
言葉を伸ばしてしまう伸発「おーはーようございます」があります。
私自身の体験談を元に吃音症について解説していきます。
吃音症と生活
私自身が生活しているうえで、吃音により苦労していることはたくさんあります。その中でも身近に感じられることを解説していきます。
1つ目は、出席確認です。みなさんも学生時代に毎朝、順番に名前を呼ばれ、「はい」と返事をした記憶が残っていることと思います。吃音者でない人にとっては何一つ難しいことはないと思います。しかし、私にとっては「名前を呼ばれ、すぐに返事をしなければいけないこと」や、「自分が返事をしなければ次の人に進まないということ」がプレッシャーに感じとても怖かったです。その結果、「はい」という言葉をすぐに出すことができず、周りから不思議そうに見られることがよくありました。言葉を出すまでの数秒間の沈黙が非常に長く感じ苦痛でした。
2つ目は電話です。対面であれば言葉に詰まり内容が伝わらなくても、最後はジェスチャーなどで伝えることができます。しかし、電話は顔が見えないので声が全てです。上手く伝えられないかもしれない不安や、言葉を発せられず迷惑電話と思われるかもしれないなど様々なことを考えてしまい非常に苦手です。
3つ目は口頭での注文です。たとえば、レストランでメニューを見て料理を注文する場面を想像してください。店員さんに口頭で注文することがあると思います。そのさいに症状が出てしまうことを恐れ、食べたいメニューではなく、症状が出ずに話せるメニュー(あんまんではなく肉まんなど)を選ぶことがあります。
吃音症の難点
吃音症と話している時に噛んでしまうということは別です。テレビ番組などでアナウンサーやお笑い芸人が話をしている最中に噛むと、笑いが起こる光景をよく目にすると思います。噛むことと吃音の症状は非常によく似ていて区別が付きにくい場合があります。そのため、吃音が出ると噛んでいると勘違いされ、笑わてしまうことがよくあります。そのことがきっかけとなり、吃音症がひどくなってしまう人もいます。
また、人前の方が症状が出やすい人が多いため、単純に緊張していると思われることもよくあります。しかし、落ち着いても症状は出てしまいます。本当に緊張して吃音症が出ていることもありますが、全く緊張していなくても出てしまうので、「落ち着いて」という声かけが辛いと感じる人もいます。
他には、難発と呼ばれる第一声が出ない症状の場合、声をかけられても返事ができず、無視していると勘違いされることがあります。
吃音症の重さは"詰まる"だけではない
吃音症は言葉に詰まる現象だけでは症状の重さや悩みの深さを知ることはできません。
例えば、普段の会話ではほとんど詰まらず、流暢に話している人がいたとします。周りからは、軽い吃音症と思われるでしょう。しかし、頭の中ではつねに吃音症について考え症状が出ないように意識して話しています。
一方で吃音の症状が普段の会話からよくでている人がいたとします。話している最中に何度も詰まっています。周りからは、酷い吃音症だと思われるでしょう。しかし、頭の中では症状について一切考えておらず、詰まっても気にしていません。
二人を見ると前者の方が吃音の症状は軽く見えると思います。しかし、症状を出さないようにしているだけで、吃音に対する悩みは深いと思われます。後者は、言葉に詰まるため見た目では症状は酷く見えます。しかし、まったく気にしていません。そのため、吃音症で悩むことはそれほどないと思います。吃音者の当事者と周囲が感じている症状の大きさは違います。このように吃音症の症状の重さは言葉に詰まる頻度ではなく、心の中も見る必要があります。
おわりに
吃音症について、当事者から症状の説明をさせていただきました。この内容は、吃音者全員に当てはまるわけではないと思います。例えば、噛んだときに笑ってくれた方が助かると思っている人がいるかもしれません。吃音症を持つ本人にどのような対応が良いか確認していただければと思います。
吃音症は100人に1人と言われています。吃音者が隠しているだけで、皆さんの身近にも悩んでいる人かいるかもしれません。もし吃音者と会話をする機会があれば、詰まっても焦らさず話を聞いてあげて欲しいと思います。
この、コラムを読み少しでも吃音症を知っていただけば幸いです。ありがとうございました。
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