それ本当にただのなまけ癖ですか?~中学生の1割がかかる起立性調節障害
その他の障害・病気出典:Photo by Christian Erfurt on Unsplash
みなさんは「起立性調節障害(OD)」という病気をご存知でしょうか?「起立性調節障害」とは様々な症状をともなう病気で、軽度なものを含めると中学生の1割がかかるといわれています。
今回のコラムではそんな起立性調節障害について、症状や対処法を詳しく紹介していきます。
起立性調節障害とは
起立性調節障害とは「自律神経」が乱れる、つまり全身の器官を調節する"交感神経"と"副交感神経"のバランスが崩れることによって、身体に悪影響をおよぼす症状が出る病気です。
具体的な症状としては、立ちくらみ、頭痛、倦怠感などがあげられ、酷いものであれば、動悸、腹痛、食欲不振、朝の起床が困難になる場合があります。
起立性調節障害は思春期におこりやすく、小学生の5%、中学生では10%がこの病気であるとされています。重度なものであれば、その症状から不登校になることも多く、不登校の学生の30~40%ほどに起立性調節障害が併存するといわれています。
起立性調節障害の問題点
起立性調節障害の大きな問題点として「自他ともに認識が難しい」点があげられます。 起立性調節障害は先ほどの通り、症状として起床困難がみられます。そのため、学校を欠席、遅刻することが多くなりますが、大体の保護者はこの症状を、夜ふかしやゲームのし過ぎ、学校嫌いなどの「なまけ癖」が原因だと考えてしまいがちです。
しかしながら、起立性調節障害は「病気」であり、"根性"や"気合"で何とかなるものではありません。しかし、見ただけで分かることではないため、両親が子をしかってしまい、親子関係が悪くなってしまうことが多いのです。
起立性調節障害には「新起立試験」という検査法が確立されており、専門の病院で診てもらうと診断ができます。もし、この症状に心当たりがある方や、この症状が見られるお子さんの親御さんは、一度通院を検討してみて下さい。
起立性調節障害の治療法
最初におことわりしておきますが、起立性調節障害の治療には日常生活への支障が少ない軽症の場合でも2~3か月ほど、学校を長期欠席するような重症の場合では2~3年ほどの期間を要します。焦って治すのではなく、周りの人としっかり協力して一歩ずつ着実に治していきましょう。
では、具体的な起立性調節障害の治療について解説していきます。
治療の前に、あたりまえのことですが「通院」をしましょう。起立性調節障害は治療しなくても、直接生死に関わるような症状はありません。そのため、通院を控えてしまうケースも多いそうです。
しかしながら、通学などで実際に支障が出ている場合、専門家の助言がなければ治すのは難しく、また、診断されることで学校側に配慮を求めやすくなります。"病気"である、と診断されていれば本人も安心でき、周囲も配慮をしやすくなるので、疑いがあれば通院することをおすすめします。
また、通院をする場合は、先ほどものべた「新起立試験」が受けられる「小児科」が適切ですので、条件に当てはまるお近くの病院を調べてみてください。
まず、治療にあたり「日常生活での工夫」が大切です。
というのも、起立性調節障害に有効な薬剤があるにはあるのですが、これだけで治るほどの効能はありません。あくまで補助的なものであるため、治療には「非薬物療法(薬を使わない治療)」がメインになります。
具体的な日常生活の対処法として、以下が有効です。
- ・1日に水を2L、塩分を10gとる
- ・日中はできるだけ、寝て過ごさない(座っておく)
- ・立つ時は、できるだけ頭を下げた状態から、ゆっくり立ち上がる
- ・長時間立ちっぱなしになるのは、できるだけ避ける。また、長めに立つ場合は、できるだけ足をクロスさせる
- ・毎日30分程度の散歩をおこない、運動不足になるのを避ける
- ・眠くなくても早めに寝床に入る
これらを医師と相談しながら、できる範囲でおこないましょう。
最後に、もっとも治療において重要な点が「周囲の理解と配慮」です。
先ほどあげた対処法の多くも、学校や保護者の協力がないと実行が難しいです。また、病気について認知されないことによる、心理的ストレスでさらに症状が悪化する場合もあります。
くどいようですが、起立性調節障害はれっきとした「病気」です。本人も周囲の人もこのことを理解して、しっかり症状と向き合っていきましょう。
おわりに
今回のコラムでは起立性調節障害について、その症状と対処法を紹介してきました。
実は筆者の妹も起立性調節障害を患っており、学校生活などで苦労しています。妹の場合は周りの人の協力もあり、なんとかやってこれましたが、なければ社会生活にもっと大きな支障が出ていたと思います。
未来ある子供たちの輝かしい将来を妨げられないように、少しでも「起立性調節障害」が周知されることを願っています。
参考文献
【日本小児心身医学会|起立性調節障害】
http://www.jisinsin.jp/index.htm
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