聞こえているのに分からない~聴覚情報処理障害(APD)について
その他の障害・病気出典:Photo by Franco Antonio Giovanella on Unsplash
"聴覚情報処理障害"(APD)とは、聴覚が正常にもかかわらず、周りで声や音がすると目の前の人との話が頭に入らない、理解ができないといった症状や、長い話になると覚えられないといった症状がでる障害です。聴覚が正常なので耳の障害ではなく、脳の認知機能に何らかの問題があると言われています。
聞こえているのに分からない
「帰り道で友達と話していると、車の通る音や周りの話し声で友達が何を話しているか分からない」みなさんはこんな経験はありませんか?うるさくて聞こえないのではなく、声は聞こえているのに内容が理解できないといった感じです。
日常生活の中で、ある程度周りがざわついているという状況は珍しくないと思います。人間はその中でも音を選択して聞き取ることができると言われています。しかし、聴覚情報処理障害の方はこの「音を選択して聞き取る」という行為がうまくできず、音としては聞こえるのにその内容が理解できないのです。
聴覚情報処理障害の知名度はまだあまり高くなく、耳の病院に行って検査してもらっても、聴覚には異常がないので医者には「気のせい」とか「たまたま」とか言われることがあるそうです。自分の中では異常を認識しているが、病院からそういう風に言われると、自分だけがおかしいのではないかと錯覚してしまう人もいます。
理解してもらえない苦しみ
"聴覚情報処理障害"の人の中には、普段の会話の中で聞き返しや聞き誤りが多いのが特徴です。そして周りからそのことを指摘されて、声が聞き取りにくいことを打ち明けたら"からかい"の言葉を突きつけられた、という経験をした方もいるのではないでしょうか。
会話ではなくても、会社で業務の指示を口頭で受けていると覚えきれず、何回もミスをしてしまい上司や同僚から叱られ、肩身の狭い思いを強いられてしまったという人もいると思います。
自分ではどこかおかしいと分かっていても、医者からは問題ないと言われ、けれども知人や会社からはおかしいと言われてしまう。「いったい自分は何者なんだろうか」という負の思考に悩まされている人も少なくはないでしょう。
中には、その葛藤からうつを発症する人もいるぐらいとても重大な問題なのです。
原因と対処法
今のところ、"聴覚情報処理障害"の詳しい原因はよく分かっていません。ですが、注意欠陥障害や自閉症スペクトラム障害、心理的な問題などを併発している人がそれなりにいることも確認されています。
治療法も解明されておらず、自分なりの対処法を持っていなければならないというのが現状です。
具体的な対処法としては、相手にゆっくり話してもらう、筆談してもらうなど簡単にできるものや、補聴器を使って聞こえやすくするという手段もあります。
「病院はどこを受診すればいいのか」よく分からない人もいると思います。普通の耳鼻科に行っても問題なしと診断されてしまうので、「聴覚情報処理障害を診断している」とホームページなどに記載されている病院に受診されるのが吉でしょう。
また、APD当事者会(APS:APD Peer Suport)というコミュニティもあり、当事者たちの声を聞いたり、交流したりするというのも1つの選択肢としていいかもしれません。
おわりに
"聴覚情報処理障害"はまだまだ名前が広まっていません。「自分はどうしてこんなにも耳が悪いのか」とか「周りに打ち明けても理解されない」と悩んでいる方は大勢いることと思います。
こうして情報を発信し1人でも多くの人に見てもらい、少しでもこの障害のことを知って欲しいと思いこのコラムを書きました。
もし、周りでこの障害に似た症状を抱えている人がいたら、是非とも教えてあげてください。その優しさが苦しんでいる人を救う助けになります。
そしてその助けが1人、10人、100人と増えていけば、"聴覚情報処理障害"に必要以上に悩み苦しむ人が減り、みんながハッピーで過ごせるようになると思っています。
【"KIKOE SUPPORT 聞き取り困難を示す聴覚情報処理障害(APD)とは?"】
https://kikoe-support.com/
【"APD当事者会 APS 聴覚情報処理障害とは?"】
https://apd-peer.jimdofree.com/
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