手帳の出ない障害たち

その他の障害・病気
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障害や難病があるからといって必ず障害者手帳が交付されるわけではなく、手帳の出ない障害というものが世の中には存在します。手帳が出ない以上健常者という括りにはなりますが、社会が課す障害や生きづらさが軽いというわけではありません。むしろ、手帳が出ないからこそかえって生きづらいといえます。

そこで今回は手帳の出ない(出にくい)障害をいくつかピックアップしましょう。そして、手帳が出ないからこその生きづらさの例として、障害者雇用にカウントされない話もしてみたいと思います。

嗅覚障害

コロナ禍で注目されだしたのが嗅覚障害です。嗅覚を失うだけで、ガス漏れなど異臭で気づけたはずの事故が防げなくなるなど大きな不便が生じます。また、記憶にある嫌な臭いとして感じてしまう「幻臭」に悩まされることもあります。

嗅覚障害は食事にも大きな影響をおよぼします。味は味覚だけでなく、嗅覚や視覚などの情報を脳で「風味」として総合的に判断することで成り立っています。そのうち嗅覚を失うだけでも美味しさを感じることができなくなり、毎日の食事が苦痛となってしまいます。

うつ病などの二次障害にも繋がりかねませんが、これでも身体障害者手帳の交付対象外であり支援を受けられません。労災や交通事故の後遺症で申請する「障害等級」のほうで一番低い14級として通るのがやっとです。直ちに生命に影響しないことから、医師すら甘く見がちといわれています。

色覚障害

色覚障害は色弱ともいい、昔は色盲と呼ばれていました。これが結局何かというと、網膜の働きの違いから見分けのつきにくい色の組み合わせが生じる障害です。緑色や赤色が識別しづらくなり、周囲の認識とズレが生じてきます。遺伝による先天性と眼疾患などによる後天性が存在します。

色が全く分からないわけではないので、赤色を朱色にするなど色遣いを少し変えるだけで配慮できます。これをカラーユニバーサルデザインと呼びます。これはJIS規格にも盛り込まれており、生活上の困難は最小限に抑えられました。

しかし認識のズレからくる諸問題までは解決しておらず、就けない職種も専門職(旅客輸送など)ながら存在します。何より手帳が出ないので、表向きは健常者であることを強いられるのが大きな困難と言えるでしょう。

ボーダーやグレーゾーン

俗に知的ボーダーとも呼ばれる境界知能や、発達障害のグレーゾーンもまた手帳の出ない障害として挙げられます。むしろ代表的なものといっていいかもしれません。

境界知能は自治体によっては療育手帳の交付対象となる可能性があります。よく挙がるのが自閉症も込みだった場合です。しかし確実にもらえるわけではなく、交付対象から外れる場合も珍しくはありません。

発達障害のグレーゾーンは明らかに交付対象外となっており、診断が出ていない以上交付する理由がないというスタンスを取られています。グレーゾーンで障害者手帳を交付されるのは大抵、二次障害による精神疾患が理由となります。とはいえ、グレーゾーンでも移行支援やなかぽつなどの支援を受けられる場合があります。

障害者雇用に「貢献しない」

手帳の出ない障害についていくつか挙げましたが、これらに対し社会が牙を剥く瞬間というのはやはり就職活動です。手帳が出ない以上は健常者として就職するほかなく、採用側にとっては障害者雇用の条件を満たせません。語弊を恐れずいえば、障害を持ちながら障害者雇用に貢献しない存在です。障害者雇用を数合わせでしか考えない企業にとっては疎ましいことでしょう。

また、障害者枠でないからと言って一切配慮をしなくていいわけではありません。嗅覚障害の人には食事が苦痛であることを把握する必要がありますし、色覚障害の人には見分けのつきにくい色遣いを避けることが求められます。

境界知能や発達グレーゾーンはともかく、嗅覚障害や色覚障害で就職差別を受けた話は寡聞にして存じません。しかし、目に見えない障害かつ手帳の交付対象外ともなれば「おいしくない」とみる企業もゼロではないはずです。福祉の狭間でもがいている層こそ最も危険な状態にあるといっていいかもしれません。

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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