「19のいのち」サイトレビュー②~専門家からのメッセージ

その他の障害・病気
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◀過去の記事:「19のいのち」サイトレビュー①~19名の犠牲者を悼んで

「19のいのち」内の「事件をみつめて」というページでは、専門家らのメッセージが掲載されています。人によっては更新で2つ目のメッセージを寄せているものもあります。

「専門家」という呼び方はあまり適切でないかもしれません。しかし、事件を通して「潜在的な差別の本能とどう向き合うか」「生産性への信仰にどう立ち向かうか」などを考察し、我々に伝わるよう咀嚼してくれている彼らです。一般からの意見と区別する意味合いで便宜上「専門家」と呼ばせていただきましょう。

文意を崩さない範囲での要約やリライトはありますが、それ以外ではより進んだ彼らの意見を伝えられるよう尽力いたします。ですが、ご自身でサイトを確かめて咀嚼しないと見えてこないものはあるでしょう。伝達量の問題もありますし、今後の更新で新たなメッセージが掲載されるかも知れませんので。

実際に対話しなくては分からない

理屈よりも先に障害者と共に「いい1日」を積み重ねていくことが答えに繋がると思います。支援や指導という気持ちではなく、感情や時間を共有して一緒に過ごす日々の積み重ねが大事なのです。私のパン屋も最初はクレームをつける人がいましたけれど、応援してくれる方々に見守られながら日々継続したことで、地域の一員として溶け込むくらいに成長しました。(高崎明・NPO法人「ぷかぷか」代表)

なかなか集団の輪に入れず危機感を募らせていた私を解放したのが、障害を持つ方々との関わりでした。「自分のままで合う世界に生きている」ような彼らの姿は、「世界に合わせて自分を変える」という生き方しか知らなかった自分に新たな風を吹き込んでくれたのです。楽しいことばかりではありませんが、それさえも己の凝固していた常識を揺さぶります。(宍戸大裕・映画監督)

「電車でブツブツ独り言」となると、引いてしまう人は多いでしょう。しかし、普通に話しかけてみれば(個人差はあれど)普通に返してくれますよ。(森達也・映画監督)

30年以上支援学校で教えてきて、規範に縛られない自由を生徒越しに体感できたのが幸せでした。植松被告はそうした「いいお付き合い」に恵まれなかったため、「生産性」について叫んだのでしょう。被告に共感する声もある中で大事なのは、理屈をこねて反論するより実際に障害者と会って「お付き合い」するのが早いかなと思います。(高崎)

差別意識との対峙

植松被告の主張に似た能力信仰や優生思想を自分たちが持っているかどうかを内省すれば、それはほとんどの人が持っているのではないかと思います。「自分に能力はない」と悲観したり「あいつの能力はどうか」と批評したりする心との繋がりを実感した人も多いのではないでしょうか。(熊谷晋一郎・東京大学先端技術研究センター准教授)

NHKの世論調査では、差別や偏見は社会に溢れていると8割が答えた一方で自身の差別意識を自覚している人は4分の1に留まるという結果が出ました。本来、差別意識とは誰もが秘めているものであり、それに気付かないのはとても厄介なことです。自分の差別意識に気付き反省するという姿勢が重要なので、差別意識を自覚する敏感さは大切にしたいものです。(佐藤聡・DPI日本会議事務局長)

障害を持つ方に問題行動を起こされるとつい周りの目を意識してしまい、まだまだ障害者に寄り添いきれていない自分の未熟さを痛感することがあります。一番つらい思いをする彼らを頭ごなしに叱ってはよけいに追い詰めてしまうので、「調子が悪い時もある」という当たり前のことを忘れないよう努めるのが課題です。(宍戸)

生産性について

寝たきりの人に生存意義や生き甲斐はあるのかと疑問に思う人は多いでしょうし、もし自分がそうなったら安楽死にして欲しいと願う人もまた多いはずです。しかし、寝たきりの人こそ平穏の境地に揺蕩(たゆた)っているかもしれません。そうした想像力を持たず勝手に生存意義の有無を決めつけていては、ただ自分が刺々しくなっていくだけです。(最首悟・和光大学名誉教授)

前提として、能力の有無と生存意義の有無は切り離して考えるべきです。経済合理性とはヒトの生活をよりよくするためのもので、ヒトの価値を上回って飼い慣らすようなものではありません。「生産性」などと掲げて人命より価値のある存在を信じ命の値踏みを行うのは、その原則に反します。(熊谷)

「生産性のない人間に生きる道理はない」という植松被告の理念に対し、障害者がいかに社会貢献をしているかや生きる意義があると様々な方が反論しておられます。しかし、植松被告と同じステージに立って「生産性」について反論すると彼の論理に嵌ってしまうでしょう。そのような問いは「役に立つかどうかなど関係ない!」と一蹴してしまえばいいのです。(森)

印象的だった話者

黒岩祐治・神奈川県知事

2017年7月の追悼式で、黒岩知事が犠牲者一人ひとりに呼びかけるメッセージがありました。その内容は「○○していたあなた」が19人分というもので、匿名であることを却って印象付けられます。黒岩知事は「本来は一人ひとりの実名と遺影に向かって祈るのが追悼式のあり方で、障害者だから出来ないというのはおかしい。」というスタンスを崩していませんが、遺族それぞれの意志があるので何も出来ないのが現実です。

高崎明・NPO法人「ぷかぷか」代表

パンを作って販売する作業所の経営や、30年以上にわたる支援学校教員としての経験を語っておられました。作業所ではクレームに負けず地域に馴染んでいき、支援学校では汚物を投げつける生徒やすぐパンツを脱ぎだす生徒にも指導していったとのことです。難点は体験談が壮絶すぎることでしょう。凡人でも「気付き」を得られるヒントがもう少し欲しかったですね。

森達也・映画監督

分かりやすさ・読みやすさ・力強さの観点から最もレベルが高いのは森達也さんではないかと思っています。「生産性の問いなど足蹴にしてしまえ」という力強いメッセージだけでもかなり参考になるのではないでしょうか。熊谷准教授や佐藤事務局長もなかなか良いメッセージを寄せておられます。

▶次の記事:「19のいのち」サイトレビュー③~一般から寄せられた様々な声

参考サイト

19のいのち 事件を見つめて|NHKオンライン
https://www.nhk.or.jp

尊厳か、プライバシーか 匿名続く追悼式|社会|カナロコby神奈川新聞
https://www.kanaloco.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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