
出展:Photo by Florian Wehde on Unsplash
フランスへ渡り短期滞在した日本人の一部は「パリ症候群」という精神的な不調に陥るといわれています。異国のカルチャーショックを原因とする適応障害との事ですが、フランスではイメージと現実の差が特に激しいとされ、「パリ症候群」が精神医学用語として通っている程です。なぜ世界中の都市でパリだけが適応障害リスクの高い場所となったのでしょうか。
適応障害の一種
パリ症候群は適応障害の一種とされ、抑うつ症状や不眠のほか被害妄想や幻覚までもが症状として挙がっています。特に20~30代の日本人女性が罹りやすいと言われており、感覚過敏で更に病んでしまったり「現地住民から差別を受けている」と思い込んだりと負のループに陥りがちです。
適応障害に近いと言われる所以は、ストレスの原因から離れることで快方に向かうところです。パリを離れれば症状が治まるため、治療の一環として帰国が勧められることもあります。罹患者の背景には旅行だけでなく留学や海外赴任など様々な事情があるので、帰国そのものが難しい場合もあるかも知れませんが。
現代では日本人のみに留まらず中国人旅行者にもパリ症候群が広がっているそうですが、日本人のケースに絞ってお話しします。なお、フランス人が日本で不適応を起こす逆のケースはほとんど報告されていません。
国民性が違い過ぎる
原因の一つは、フランス人コミュニティの傾向に日本人が合わせづらいことにあります。フランスではハッキリとした意思表示を是とする文化があり、個人主義が強いです。定かではありませんが「フランスでは横断歩道のない道路を横切る自由がある。しかし、それで轢かれても自己責任」と以前聞いたことがあります。
それが日本人と合わないそうです。日本人コミュニティは空気を読んで集団に同調することを是としていますが、集団に属する安心感や「察して」もらえる可能性といったメリットもあります。日本の集団主義に漬かりきった人がフランスに行けば、寄る辺もなく忖度もされない「遭難状態」となり、精神的に病んでいくのだそうです。
他にも、電車さえ遅れて当然なほど時間にルーズな所も日本人に耐え難い点です。アジア人を好ましく思わない現地住民や、日本人観光客が犯罪者にとって格好の獲物である点もパリの暗部と言えるでしょう。また、単純に職へ就けないことも大きな原因です。
誤ったステレオタイプも一因
昔からパリは「花の都」「流行の最先端」「世界一オシャレ」などとメディアで謳われてきました。テレビ越しで見るパリの風景はいつも美しい街並みで、これに羨望や憧憬を抱く人も少なくありません。
当然と言えば当然なのですが、パリとて完璧な街ではありません。皆が皆オシャレへの意識を高くしている訳でもなければ、身だしなみのレベルもピンキリです。寧ろゴミのポイ捨てが多い不潔な街というのが実情で、地下鉄のホームでは落書きやネズミなど首都の交通機関にしては(時間にルーズなのも相まって)荒廃気味ですらあります。華やかなイメージと不潔な現実の落差が適応障害の主因となっていることは想像に難くないでしょう。
他にも、フランス語ネイティブのフィラー(日本語で言う「えっと」「あのー」のような繋ぎ)が舌打ちのように聞こえ、聞き手の日本人が「態度が悪い」「怒らせたかな」などと思ってしまう発話構造の差異も一因として挙がっています。もし日本で謝罪会見で舌打ちなどしようものなら非難轟々でしょう。
厳密には舌打ちと違うようですし、フランス人は陰湿な舌打ちよりも直接不満を述べる国民性なので完全に冤罪です。ただ、日本人でもフランス語に精通していれば「舌打ちに聞こえなくなる」そうです。逆に言えばフランス語が未熟だと「舌打ちされた」と感じやすい(そして被害妄想に陥る)のでしょう。
何かしらの目的でパリを訪れるならば、美しいステレオタイプから離れてリアルな等身大のパリを予習するのがパリ症候群の予防になると思います。とはいえ全てはコロナ収束後の話になるのでしょうけれども。なんにせよ、勝手に憧れて勝手に幻滅されてはパリ市民にとって迷惑でしょう。
参考サイト
要注意!日本人女性が陥りやすい「パリ症候群」その原因と症状について|FRANCE365:最新のフランス旅行情報・現地情報
https://info.ensemblefr.com
フランス人は舌打ちをするのか?|生きたフランス語見聞録
https://deslys.blog.fc2.com

遥けき博愛の郷
遥けき博愛の郷
大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。
適応障害
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