障害者雇用率28.6%!国内唯一の木毛(もくめん)企業・戸田商行ってどんな会社?
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高知県土佐市の「戸田商行」は、日本国内で現存する唯一のもくめん専門業者です。「もくめん(木毛)」とは薄く削った木材によって成る天然の緩衝材を指し、木の持つ香りもまた特徴となっています。また、もくめんだけでなく植生シートの材料やエッセンシャルオイルも取り扱っています。
社長含め総勢10人の会社で、うち2人が障害者雇用です。また、その工程も伐採で残った枝葉まで有効に使うサステナブルなものです。これらの取り組みは一朝一夕で始まったものではなく、先代社長の頃から続いている伝統というのも驚くべき特徴といえるでしょう。そんな個性的なもくめん企業・戸田商行に訪問しました。
先代から受け継いだ障害者雇用
──障害者雇用のきっかけは何ですか
「50年以上前に義両親が創業した頃から、支援学校の『生徒の体験雇用をさせてほしい』という依頼を受けてきたと聞かされています。私が嫁いできた1992年には既に障害者が先輩として働くのも当たり前という環境でした」
──障害者雇用を続けてきた思い出などはありますか
「いま障害者雇用で働いている2人のうち片方は、支援学校高等部から新卒採用で入ってきました。インターンシップでも体験しており、適性も本人の意向もあったので卒業と同時に入社です。最初は自分に自信がなくて人の目を見て話せない、劣等感が基底にありました。褒めたり声掛けしたりしても、それが長く常態化すると却って気分が落ち込み、欠勤が増えます。入って半年で勤怠が安定しなくなるパターンは多いので、そういうタイミングだと受け取って、自信を取り戻せるよう粘り強く対応を続けると、また勤怠は安定してきます。そこでまた、出来ることを増やしていき、居場所があると分かれば落ち着いていくんですよ。それで2年目、3年目と段々落ち着いていき、会社の役に立っているという自信もついてくる訳ですね。驚いたのは、50名ほどの規模のイベントを開催した時、自分から司会をさせて欲しいと申し出てきたことです。司会を立派にやり切って来場者からも褒められたことで、また自信がつきました。もう自信なさげな姿はなかったですね。月に一度福岡から手伝いに来る娘からも『毎度会うたびに成長している』と言われます。障害の有無によりませんが、こう“共に育っていく”実感が大きいですね」
「もうひとりは、失敗を恐れるあまり何を振っても拒否する人でした。それでも、『失敗してもいい』『障害を理由に最初から拒否してはいけない』と指導していくと、去年できなかった作業が今年できるようになるなど成長を自分でも感じられ、やがて拒否することも減ってきています」
「“自立”をどう捉えるかに因りますが、入社した頃よりは遥かに自立できていると思いますよ。仕事に対してモチベーションをもって取り組み、自他共に認められていると感じていますから。私の役割は、そういう場を保つことだと思います。事業が拡大して採用の必要性が増えれば、仲間を増やしていきたいですね。まずは今いる社員と長い付き合いを続けます」
木々の特徴
「赤松は、かつて存在した120社程度の業者すべてが扱っていた材料です。比較的無臭なので、果物なら本来の匂いを邪魔しませんし、木肌が白く柔らかいため加工がしやすく重宝されていました」
「檜は、癒される香りが自慢です。ただ赤松に比べると硬いので、機械への負担も大きいのですが、緩衝材にも高級感が欲しい方向けに採用しています。そのぶん緩衝性も高いですね」
「杉は、植生シート(山を切り開いた斜面を保護するシート)の材料としてメーカーに売っています。緩衝材向きではないので植生シートとしてしか扱っていませんが、香り自体は良いものです」
「楠はメントール系の独特の匂い、衣服の虫よけとして使われていた樟脳(しょうのう)という成分の元となります。香りの強さは木そのものを保護する役割もあり、動けない植物ならではの逞しさでもあります」
「材木は森林組合にオーダーを出し、それに沿ったものを買い取って集めています。山で伐採した後は、枝葉を林地残材として残すことが多いですね。伐採したての材木が望ましいですし、伐採時期も10月以降の冬場がベストで香りなどが良くなりますが、今冬は酷暑の影響で市場への出回りが遅れたので材木の保管は現状少ないですね」
余った枝葉で新事業
「2022年から新たにエッセンシャルオイルの抽出も始めました。林地残材として残していたものを材料として使っています。また、焼却で発生する熱を用いてもくめんを乾燥させています。捨てどころのない製造過程といえますね木質バイオマス燃料への補助金が数年前から出されていますが、うちは創業当時からそれを先取りしています。工程も含めてナチュラルで安心安全な商品です」
「木を使う罪悪感から一時期マイ箸運動など流行りましたが、あれが何をもたらしたかというと国内の割り箸メーカーを倒産に追いやっただけ、木材の国内需要を高めないといけないのに逆行してしまっただけですね。日本の山は、持続可能(サステナブル)な国内資源であるにもかかわらず活用されていなくて、山の手入れも行き届かない問題にも繋がっていると思います。これから木の活用を推進しなければならない段階に来ています」
「何といいましても、本物の木を扱う場所なので自然の気持ち良さがあります。社員もほとんどインフルエンザにかかりません。免疫力が下がらないのかもしれませんし、都会で抱えがちなストレスとも無縁なのでしょう」
「オイルを扱い始めたきっかけは、檜のオイルを作るメーカーに出会ったことです。2015年に社長に就くまで、経営の経験もなく会社を転々として、家庭との両立にも悩んでいた時期がありました。その時に元気づけてくれたのが檜のオイルです。そのオイルのアメリカ本社ともお話があって、コロナ禍に伴う新事業への補助金に当選したのも後押しして2021年から始めました」
「もくめんは林業と工業の狭間にある1.5次産業で、オイルの抽出もまた同様なので無理を強いることはありません。機械を作動してから付きっきりになる必要もないので増員がなくとも始められます。担当部長をしてくれる人も乗り気です。新事業というのは社長ひとり頑張っても、社員が乗り気でなければ成功しません。そこで、同意を含めてあらゆる相談を重ねてオイル事業に至りました」
戸田商行 公式ホームページ
https://www.toda-shoko.com