モスキート音と可聴域、年齢と耳に関する2つの話
暮らしPhoto by Steijn Leijzer on Unsplash
なにやらご近所トラブルで「モスキート音」が使われたようですね。家庭用プールで遊んでいた一家が、隣家から執拗に飛んでくるモスキート音で体調を崩し救急搬送されたというのです。
「モスキート音」とは、その名の通り蚊の羽音を由来とするもので、音そのものは金属音に似た非常に耳障りなノイズです。最大の特徴はその周波数で、加齢に伴って聞こえにくくなり、年齢が低いほど影響を受けやすい絶妙な塩梅となっています。簡単に言えば、若者にだけ聞こえる不快な音、それがモスキート音です。
モスキート音は野良猫やネズミの対策にも使われることがあるらしいのですが、人間に使われた事例も先述のもの以外に存在します。よく言われるのが、ヤンキーが屯(たむろ)しないようにモスキート音を鳴らしまくる話ですね。年齢によっては自分だけ安全圏で攻撃できる方法でもあるので、これを積極的に悪用するのは卑怯という他ないです。
先述の一家は、親もまとめて救急車のお世話になりました。両親や隣人の年代は分かりませんが、何歳くらいをターゲットにしたモスキート音だったのでしょうか。ちなみに、イヤホンを大音量で聞き続けるなど耳に悪い生活をしていると、同じ年齢で聞こえる筈のモスキート音が聞こえなくなる場合がります。早い話が、耳の老化ですね。
こういう話のたびに、「子どもの遊び声を嫌がる奴は異常者だ」という論調が飛び出します。子どもが遊んでいると近所のおじさんが起こるというのは、たぶん集合的無意識にも刻まれたシチュエーションなのでしょう。子どもの遊び声にキレているのも高齢者が多いイメージが持たれています。
実は「老人性難聴」の仕組みは、当人にとって非常に意地悪です。40代で高音域から徐々に聞こえづらくなり、60代以降は話し声どころか自分の声さえ聞きづらくなってもおかしくはありません。その中で、「一定以上の音量は必要以上に響く」という厄介な特性もプラスされます。つまり、安心して聞き取れる「心の可聴域」が狭まっている訳ですね。若い頃に比べると、子どもの遊び声が不快に感じられやすいのも、このためです。
こういう時につい出てくるのが「子ども叱るな、来た道だもの。年寄り笑うな、行く道だもの」という名文句です。半分だけ広まると悲惨なことになりかねないので、必ずセットで覚えてくださいね。
参考サイト
子どもが泣き叫び嘔吐…隣家からのモスキート音が原因か?
https://news.yahoo.co.jp