ギャンブル依存症治療が保険適用に…
その他の障害・病気この記事において、ギャンブルとは競馬・競輪・競艇のような公営ギャンブルや宝くじ、あるいはパチンコなどを表しています。
ギャンブルは適度に楽しんでいれば問題はありませんが、遊びの範囲では満足できず一線を越え、傾倒してしまう人がいます。
現在日本では、ギャンブル依存症は正式な疾病として認定されており、治療法も確立されています。
しかし、合併症(うつ病や不安神経症、適応障害など)がない場合は薬物治療が行われず、現状ギャンブル依存に特化した治療に公的保険は適用されていません。ところが今年になって厚生労働省から保険適用に加える方針が出されました。
看過できないギャンブル依存症
ギャンブル依存症は、性格的に恥と罪の感覚が強く、家族との親密な関係や信頼が希薄で、人間関係が苦手な人がのめりこみやすいとの見解もあります。また、アルコール依存症や喫煙、気分障害、社会不安障害など、心の健康状態に問題がある人もギャンブルにのめりこみやすいとの指摘もあります。そのため人に相談できずに、最悪の結果を招いてしまうこともあり、近年の増加傾向からすぐに対策を打つことを求められてきました。
今回保険適応されるのは、「集団治療プログラム」というものです。この治療法は、日本医療研究開発機構(AMED)の研究班が、全国35ヶ所の医療機関で患者187人に対して実施したもので、プログラムを受けた人と受けていない人を比較したとき、前者の方がギャンブル依存から抜けた割合が高かったという結果があります。
統合型リゾート(IR)とギャンブル依存症
2016年12月15日にカジノを中心とする統合型リゾート(IR)整備推進法が衆院本会議で可決されました。日本においてのIRは報道等により「カジノ法」と呼ばれ、一見するとギャンブル場の誘致に思えますが、実際は滞在型観光を促すための施設群の総称です。
公共政策としてIRを推進する目的は、適切に運用したカジノの収益を「税金」として地域活性化のために投入して財政改善を行うとともに、国際競争力を培うことを旨としています。これはメリットのみがフューチャーされていますがもちろんデメリットもあります。
- ・ギャンブル依存症患者の急増
- ・福祉財源への負担
- ・自殺者の増加
- ・労働力や雇用の喪失
特に上記のこれらはアメリカや韓国でも問題視されており、アメリカでは社会的コストが年間50億ドル(約5500億円)、生涯コストが400億ドル(4兆4000億円)にも上りました。また、韓国ではギャンブル産業の売り上げ16.5兆ウォン(約1兆6400億円)に対し、家庭崩壊や労働意欲の低下が社会全体で、60兆ウォン(約5兆9000億円)の損失となりました。
IRによる経済面での効果は大きいですが、「ギャンブル依存症」への研究が日本ではあまり進んでおらず、統合リゾートが建設された場合、どのような影響が起こるのかは予測がつきません。
2019年12月11日に開かれた中央社会保険医療協議会での議論を受け、ギャンブル依存症の治療への保険適用に多くの委員が賛同する反面、「ギャンブル依存症は自分の努力で回復すべきもの。安易に保険適用することで、(依存症患者が増えるなど)逆の方向に向かうかもしれない」など、細心に検討すべきという声もあがったといいます。
このような現状の中、公的保険の適応範囲を変更することは性急すぎるではないでしょうか。
おわりに ギャンブル依存症を疑われる人が約320万人いる一方で外来患者はその1,000分の1という現状です。ギャンブル依存症にかかわらず依存症の厄介なところは、当事者が自覚をせずに早期治療にとりかからないことです。
また、依存症の早期には何らかのストレスを抱えていることが多いので、保険適用になったことをきっかけに、医療機関や専門家に相談することをおすすめします。
ギャンブル依存症については、より詳細な記事がありますのでよろしければそちらも一読していただけると幸いです。
▶ギャンブル依存症をご存知ですか?①〜依存症の定義について(関連リンク)
参考文献
【読売新聞オンライン-ギャンブル依存症に保険適用へ…集団治療プログラムなど対象-】
https://www.yomiuri.co.jp
【消費者庁-ギャンブル等依存症でお困りの皆様へ-】
https://www.caa.go.jp
【依存症対策全国センター-気づいたらどうする?-】
https://www.ncasa-japan.jp
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