「歩く」抗うつ体験記

暮らし

出典:Photo by Beth Macdonald on Unsplash

わたしの抱える双極性障害の鬱の部分は、本当に気だるく、ベッドから動くことやお風呂に入ることも億劫になります。一時期SNSなどで話題になっていた「お風呂キャンセル界隈」は、鬱症状が少し影響しているのかもしれませんね。

そんな鬱の状態ですが、わたし自身の症状としては改善の傾向が見られます。これは自分でも驚いていて、なにせ20年弱もの間、戦ってきたものなのです。

では普段の投薬など以外で何が効果的だったかというと、それは「歩く」ということだけでした。「そんな簡単なことで?」「歩くのは面倒だし……」とかそういうのは色々あると思いますが、まずはお話だけでも。

きっかけは母の介護

わたしの母は80歳を過ぎており、じゅうぶんに高齢者といえます。頚椎ヘルニアの手術の影響や、坐骨神経痛、リウマチなど様々な身体的な不調もあり、杖をつかないと外出はできません。それでもまだ本人の気持ちは折れてはおらず「まだまだヘルパーさんに頼らんでもいけるわ!」と買い物に出たりします。

少しの買い物なら母一人でもいいのですが、夕飯の買い物など荷物が多くなる場合はわたしが担当します。そういった生活を続けていたのですが、近ごろでは変化がありました。

それは「ふたりで買い物に行く」というだけのことです。大したことないと思われるかもしれませんが、これがうちの親子には効果てきめんでした。

母はわたしと買い物に行くことで普段自分ひとりだけでは諦めてしまう商品でも、わたしが荷物を持つからと気軽に相談して買い物ができます。わたしとしても、長年主婦をしてきた母に相談しながら食材を吟味できることは助かります。

何より、ふたりで買い物に行くというスケジュールを立てることが、無理にでも外出する理由になり、生活のリズムを作ります。加えて太陽光を浴びることによるセロトニン増加の期待もあり、抗うつ効果はかなり高いのではないかと思います。

少しずつ、ふたりのリハビリ

この外出はふたりにとって「リハビリ」のようなものです。母は足腰のリハビリになり、以前は100m足らずの距離で足が痛いと嘆いていましたが、今ではかなりの距離を歩けるようになっています。

わたしも聴覚過敏などの影響でイヤホンなしで出歩くのが厳しかったのですが、母とスーパーや商店街に行くことで、雑踏であったり人の会話であったりの「街の音」を楽しむことができるようになりました。これにより、頓服の抗不安薬を飲むことがすごく減りました。

そして最近ではふたりでお寺参りをしたり、近日中にはお花見をしようと計画しています。

100mも歩けなかった母が、8000歩も歩くようになっていること。これはかかりつけの主治医の先生にも早く報告したいです。

一般就労へ向けての足掛かり

実はこの生活で得られている効果は、単なる抗うつだけではありません。わたしは相談員の方ともお話しているのですが、今後はヘルパーの資格取得から、介護関係での就職を目指しています。

もう30代後半なので、本当にここがラストチャンスかもしれません。母との「歩く」ことが、そんな将来の介護職のための練習になっているのかも、と少しだけ期待しています。

これからもふたりで色んな道を歩いて、息子と歩いた晩年は楽しかったなと思ってもらえたら幸いです。

新井 一生

新井 一生

社会人になってからパニック障害、統合失調症などを患った精神障害者。
精神病になってからも沢山の失敗を経験しながら、なんとか生きている。
好きなものはゲーム。

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