グループホームに住んでみて知った(1)~とあるアラフォーADHDの一意見

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出典:Photo by Milo Bauman on Unsplash

気がつけば、グループホームに住みだして1年が過ぎようとしている今、なぜグループホームに入ったのを書き残しておきたくなった私。記憶をさかのぼってみると、まず最初に浮かんだのは、あの緊急事態宣言下。就労移行の事業所に集まっての研修を取りやめ、在宅研修を受けることになり失ってはじめて解った「ささやかな息抜き」を自分がいかに大切にしていたかということでした。

ある夜の風景

このごろ洗濯物を干そうと、いっぱいになったカゴを持ってベランダに出ると、これはもう本格的に冬の到来だなぁ、と感じます。

薄手のジャンパーでは外気に耐えきれず、ダウンコートやベンチコートを羽織ってベランダに出ないと、風邪をひいてしまいそうです。「ほかにも洗濯物を干す方がいるのであまり場所を取りすぎないように」「でもせっかく干した洗濯物が乾きにくく無いように」「何せ、外が寒いので効率よく乾くように干すにはどうしよう」などとあれこれ知恵を使っていると、あっという間に時間がたってしまいます。

すべて干し終わってから、洗濯カゴに残っているものがないかを確認し、すぐにベランダの共有スペースに繋がる大きな窓をガラッと開け、そこから頭を突き出して「(洗濯物)干すの遅くなってごめんなさーい!今終わりましたー!」と大声で他の利用者の方に呼びかけます。

ややあって、自室でキャーキャー言いながら大好きなアイドル番組を見ていた利用者の方が「解りましたー!ありがとうございまーす!」とこれまた大声で返事をします。

ベランダ用のスリッパがひとつしかなくて、2人1度に洗濯物を干すことができない上、もたもたしていると消灯時間はあっという間に来てしまうので、洗濯物干しも交代もスムーズにおこなわないと、といつも心がけて動いています。

さて、状況がなんだかよく飲みこめない……というみなさまに少し説明させていただくと、私は現在集団生活タイプ(シェアハウス型)のグループホーム(以下、単語が少し長いので「ホーム」と略して記載いたします)に昨年の夏から住みはじめました。毎日夕方から来てくださる世話人の方や、ホームを経営している職員の方などのサポートや助言を受けながら生活しています。

このホームで暮らしている利用者の方は私を含めて4名。ダウン症の方、軽度知的障害の方、病名などはオープンにはされていませんが複数の難病を患っている方、そしてADHDで二次障害として双極性障害を患っている私。障がいや病気の種類はさまざまですが、このホームの入居対象となる障がいの種類は知的障害と精神障害です。

私がこのホームで暮らし始めてから、早くも1年が経過しました。なぜ、私がホームで暮らすことなったのか、そしてそもそもホームとは何で、どのようなものなのか。さらに、ホームに実際に居住するメリット・デメリット、順を追ってお話していければと思います。

事の発端①息抜きが、できない

2020年の4月に新型コロナウイルスの大流行により、最初の緊急事態宣言が発出されたことはまだ記憶に新しいですが、そのころ私は実家から大阪市内のとある就労移行支援事業所(以下略、就労移行)に通所していました。就労移行とは、障がい者が就労にあたって必要なビジネススキルやコミュニケーションスキル、障害特性の把握やそれにともなう必要な合理的配慮の理解など、就職活動をへて採用されるまでを支援する事業所です。

緊急事態宣言発出の前から私の通所する就労移行ではパーテーションを席ごとに設置したり、手洗い消毒を奨励するなど厳密なコロナ対策をしていましたが、通所する利用者の数が多く、いわゆる「三密」になってしまう状況を避けるため、4月1日より在宅支援をおこなうことになったのです。

これまでに受けていたビジネスマナー・コミュニケーションスキルなどの研修はもちろん、日々の朝礼や終礼も、今ではもうすっかりおなじみとなったZoomで受けることになりました。さらに講師の研修に加えて、各自興味あるジャンルのオンライン講座を選択して視聴し、講座の内容を学ぶという形で週2回ほど自学自習の研修も始まりました。

在宅支援が始まった当初は、朝から疲れ切った顔や不安げな表情の勤め人でぎゅうぎゅうに詰まった電車の中「ウイルスに感染しやしないか」と冷や冷やしながらの通勤から解放されました。その上に時間が浮いた分、朝ゆっくり過ごすことができるようになり、全身きちんとビジネスカジュアルの服装をすることもメイクを丁寧におこなうこともしなくなり「自室でのんびり研修を受けるのって楽だよなあ」とほくほくしていたものでした。しかし、すぐに私は少しずつ在宅研修ならではの目に見えないストレスを実感し始めることになります。

例えば、これまでの通所の行き帰りにちょっと気分転換のために立ち寄っていた、駅の構内にある本屋での小説や漫画の新刊のチェック。「あっ、やっぱりこの作品今月発売だったんだ、嬉しい!」とさっそくレジに足を運ぶも、頭の中にあるのは前巻の続きがどうなったのか早く読みたいと逸る気持ちと、これからすぐに読めるのだと思う満足感。

加えて、同じ駅の構内にあるドラッグストアや、バラエティショップでの新しいコスメのチェックやスウォッチ(※アイシャドウやチークなどのテスターを肌に実際に塗って色味や発色の確認をすること)。肌の上できらきらと輝く多色ラメや、繊細な輝きのパールが惜しげもなく使用されたテクスチャーに、これぞテスターを試す醍醐味!と思わずにやっと目を細めてしまいます。

さらに就労移行が入居しているビルのコンビニで、新しく発売された期間限定のスイーツやパスタなどのお昼ごはんの品定め。食費のやりくりをしつつも、いかにお得に美味しいものをお買い物するか、楽しい悩みはつきません。

それから、たまに「研修を頑張った自分へのごほうび」として買っていた、目の前でさまざまな果物ジュースを作ってくれるお店での少しお値段お高めのジュースの購入。手渡されたコップを取って、ジュースを口に含んでみると豊かな甘い香りが口の中を満たし、冷たくて甘い感触が喉を通り過ぎていく、私にとっては贅沢な瞬間。

駅前のファストファッションのお店でウインドウショッピングも時々楽しみ「うわあー、こんなビビッドな紫色のジャケット買う人いる?」などと1人つぶやきながらうろついていました。時々見て楽しむだけでは済まず、一目ぼれした洋服を衝動買いしてしまって、無駄づかいしたなぁ、と反省することもありました。

通所しなくなることで、知らず知らずの内に私がしていた、ちょっとした息抜きが失われてしまったことに気付くまで、そう遅くはありませんでした。(→次回に続く

オランプ

オランプ

長年にわたってうつ病で苦しみながらも病気を隠して働き続け、40歳になる前にやっと病気をオープンにして就労したものの生きることのしんどさや職場でのトラブルは軽減されず。実はうつ病の裏に隠れていたものはADHDであり、更に気が付けばうつ病も病名が双極性障害に変化。これだけ色々発覚したので、そろそろ一周回って面白い才能の1つでも発見されないかなーと思っているお気楽なアラフォー。
実は自分自身をモデルにして小説を書いてみたいけど勇気がない。

注意欠陥多動性障害(ADHD)

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