発達障害な私のコミュニケーション力をきたえた「聞く力」~聞き上手を目指す技術と注意点

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発達障害だけど、人とコミュニケーションを上手く取りたい。そう願う人に必見なのは、「聞く力」です。自閉スペクトラム症(ASD)でもある以前の私は、コミュニケーションが下手でした。自分の話したいことばかり話す、相手の話に興味を持てず無口になる、自分の意見を押し付ける等、失敗やトラブル続きでした。しかし、発達障害の私がいかに人の話を聞ける人間へ成長できたのか、聞く技術とその効果、課題について伝授します。

コミュニケーションにつまずく発達障害

発達障害のある人・子ども本人、と周囲の悩みの一つにはコミュニケーションの問題があります。発達障害の方は、以下に述べる様々な特性ゆえに、他者とのやり取りに齟齬(そご)が生じやすいです。

【発達障害がコミュニケーションにつまずく理由】
・興味が限定されているため、人に関心を示さない、同じ話ばかりする。
・自分の話したいことばかり話すか、非常に寡黙(かもく)。
・言葉に隠れたニュアンスや暗黙の了解が分からない。
・表情や声の調子、仕草から、相手の気持ちを察するのが難しい。
・相手の話を正論や批判で返してしまう。
(感情よりも論理で考えがちなため、情動的な共感の弱い人が多いです。白か黒かのはっきりした結論を好む傾向もあります。)
・逆に感情的になってしまい、話を聞く余裕がなくなる。
・相手の話に集中できない。
(人の話を聞きながら、他のことにも注意をむけることが難しく、気が散りやすいです。聴き取りが弱いため、聞き逃しや聞き間違いもよくあります。)

「聞く力」に出会う前の私も、興味の幅が非常に狭く、おしゃべりな時と寡黙な時の両極端を行き、正論の押しつけるといった特徴がありました。「聞く力」を身に付けた今でも、聴き取りの弱さや非言語的サインの察知、会話のネタ等にハンディを抱えています。それでも以前の自分と比べると、「聞く力」が身につけたおかげで、人間関係のトラブルも激減し、多くの人から信頼されやすくなりました。
発達障害の特性や二次障害の影響が強いと、人の話を聞けるようになるまでは、定型発達の人よりも多くの練習と時間、労力を要します。しかし、聞き上手のプロを目指す必要はありません。聞く技術を一つでも頭に入れて実践するだけで、人とのコミュニケーションがスムーズになります。

聞き上手になるポイント

次は、発達障害のある方も日頃のコミュニケーションで悩んでいる方も必見、「聞き上手」になるための技術とポイントをピックアップします。

【①聞き上手は話さない】
相手の話を聞くには、まず「話さない」、もしくは話し過ぎないことです。たいていの人は、自分の話を誰かに聞いてもらいたい、という欲求が強いです。「この人には話しやすい」、「この人は話を聞いてくれる」、と感じてもらうために、こちらは聞き手になり、相手の話したいという欲求を満たします。

上手な聞き手は、聞かれたことしか話しません。例えば相手に、「最近、恋人からの返事がなくて不安で。あなたなら、こんな時どうする?」、と訊かれて「私なら思い切って電話してみるかな」、と短く答えて終わるのならいいです。しかし、ついそこで「あ、それで思い出したけど、私の恋人は電話が長いとか文句が……もにゃもにゃ」と話し始めると、話し手モードに変わってしまい、相手は話す出番を失います。もちろん話の内容や相手によっては、ちゃんと答えてほしいとアドバイスらしきものを求められることもあります。その場合も、自分の意見はあくまで参考に留めてもらい、納得できる答えは相手が自分で出すもの、と認識しておきます。

また、質問攻めや聞きっぱなしもよくありませんが、相手にほどよく質問を返すのも効果的です。上の例であれば、相手は自分が話したくて質問をしてくるということもあります。その場合は、「電話してみるかな。あなたはどうしたいと思う?」、と素早くバトンタッチしてあげます。すると、相手もスムーズに「そう、私はね……」と話しやすくなります。相手が話し出したら、今の話し手は相手だという流れに任せます。会話の途中にある沈黙には、①相手が次に言おうとしていることを考えている、②何を話せばいいんだろ、疲れたと考えている、ものに分けられます。さすがの私もどっちなのか見分けることはできませんが、①のことを考えれば沈黙が流れたからといって、こちらが無理して話す必要はないということです。

【②あいづちをしよう!】
聞き上手は話さないとは言っても、ただ黙っているのは聞いていることになりません。自分が聞いているつもりでも、相手のほうが「自分の話に興味を持ってくれている、理解してくれている」と思っていなければ、聞いたことにはなりません。自分がちゃんと聞いていることを相手に分かりやすく伝え、相手にも話しやすいリズムを生むのには、あいづちが大切です。↓

あいづちの種類
話す相手に対し、肯定的なあいづちを返すことで、口下手な人でも会話をスムーズに進めやすくなります。ただし同じあいづちを使っても、相手の立場や年齢によっては失礼にあたる場合もあるので注意します。そして、こればかりは練習する必要がありますが、あいづちはタイミングとリズムも大切になります。

一番使いやすいあいづち:「そうなんですか」、「そうですか」、「そう」、「そうなのね」
ちょっと難しいあいづち:「なるほど」、「ふんふん」、「へえー、そう」

上記以外にもあると思いますが、同じセリフでも落ち着いた声、明るい声、声の伸び方を変えて見る、複数のあいづちを合体させると、あいづちの種類を増やせます。
例:そうなんですか~、そうなんですか!?、へえ、そうなんですか、そうなんですか…

上司や年配、立場が上の人へのあいづちとしては:「はい」、「ええ」、「そうなんですか」、「そうですね」、「その通りですね」が無難だと思います。ちょっと難しいあいづちを使うのは、場合によっては失礼に当たるので注意します。職場の雰囲気や規則にもよりますが、ビジネスマナーにおいても、目上の人に対して「なるほど」は使いません。

あいづちを使うことに慣れてくれば、今度は相手の言った言葉をそのまま返します。先ほどの例であれば、「恋人からの返事がなくて不安なんだね」、とそのまま返します。すると、相手は自分の話を聞いてもらえていると感じます。言葉をそのまま使うことで、微妙なニュアンスの違いや誤解を防ぐこともできます。ただし、ひたすらオウム返しするだけでは、相手は馬鹿にされていると思うので、注意します。

【③アドバイス・批判・評論はしない】
聞き上手は、一方的な批判や助言はせずに、自分は自分、相手は相手、という領分をわきまえることができます。批判やアドバイスをやってしまいがちなのは、たいてい相手から悩みごとを相談された時です。しかし、たいていの相手はアドバイスを求めていません。多くの話し手が求めるのは、「大変だったね」と共感されることによる安心と承認、自分が納得できる答えなのです。例外としては、社会保障の制度についてだとか、知識を求める場合です。

感情よりも理性や合理性で考えることの多いASDの方は、苦戦するかと思います。以前の私も、道理として正しいか間違っているかで判断する価値観が強かったです。なのd、否定的な感情に振り回されるがままに問題を避ける人、もしくはこじれさせる人の気持ちを理解しようとしませんでした。しかし皮肉ですが、いじめと不登校の経験があって初めて私は自分を振り返ったのです。当時の私は、正論と持論を押し付けるばかりで、言われた相手の気持ちを考えたことがなかったのです。そして、人間は正しさだけで生きていけるわけではありません。正論を押し付けたというのは私の過ちであり、傷ついた私と相手の感情を大切にすべきだったことに、ようやく気付きました。完璧主義、善か悪かという価値観を脱するには、本でもいいので、広い世界の様々な価値観にふれてみるのもいいです。

批判しないというのは、あいづちにも言えることです。もしも、聞き手が「でも」、「けど」、「しかし」、「いや、それは」、といったあいづちで返すと、話し手は自分を否定された気持ちになり、話す意欲を失います。

【④素直・謙虚な気持ちでいる】
聞き上手の方は、素直で謙虚になれる人です。基本自分を良く見せようと飾ったり、嘘や誤魔化したりせずに、自分と相手に正直になります。とはいえ、文句やグチなどの否定的な部分もそのまま相手にぶつければいいわけではありません。あなたが話し手の立場だとすれば、聞き手は素直で自分をオープンにしており、偏見や否定的な眼をしていない人の方が、話しやすいと思いませんか。

発達障害は、自分を飾らない素直な方が多いです。とはいえ、当事者は自分の正直すぎる所が相手を怒らせてしまう、とネガティブに捉えている方も多いです。しかし見方を変えれば、嘘や誤魔化しを好まず、自分と相手に真っ直ぐ向き合う「誠実性」にも繋がります。せっかくの誠実さを活かさないのはもったいないことです。前述したあいづちも含め、相手を肯定的に受け入れたい、という姿勢と言葉を身につければ問題ありません。そしたら、たとえ不器用で素直過ぎるところがあっても、相手は親身に付き合ってくれていると好感を持ってくれます。

また、発達障害のある方は興味の幅が狭いことから、相手の話についていけないことも多いです。その場合も、分からないことは素直に分からない、と伝えます。そして、分からないことは相手に教えてもらうという姿勢で対応すれば、相手は関心を寄せられていると気を良くします。

【⑤便利な小道具を活用しよう】
人との会話やコミュニケーションを円滑にし、リラックスさせてくれるものがあります。美味しい食事や綺麗な観葉植物、家具と部屋の飾り、音楽、お茶等、話題のネタや見ていて人を和ませるものが役立ちます。逆に狭く殺風景、静かすぎる場所ですと、双方も落ち着きません。

また発達障害のある方で、何気ない話や雑談が苦手、相手と何を話したらいいのか分からないという声も多いです。初対面とは、天気の話から、イベントの話、目の前の自然や風景、お店、街行く人々の服装、音楽、食べ物や好きなものの話等、双方に答えやすい・共通の話題があると会話がスムーズになります。とっさに思いつかない、上手くいかない方では、話題を予めリストアップし、メモを用意する、練習しておく等をします。

いかがでしたか。聞く技術をピックアップしていきましたが、そのうえで聞き上手になるには大切なことがあります。

技術は、相手を知りたいという気持ちのためにあること

練習と実践を積み重ねること

聞く技術を練習した効果・発達障害の課題

【聞く技術を実践した効果・結果】
ASDゆえに、以前は人の話が聞けず、相手と対等なコミュニケーションを交わせなかった私が、聞く技術を実践した結果です↓:

・相手を傷つける、口ゲンカがほぼなくなりました
以前は、同級生やきょうだいに心ない一言で傷つけたり、ケンカしたりすることが多かったですが、それがほぼなくなりました。特に私のきょうだいとは、価値観の違いや押し付け合いでケンカばかりでした。しかし今は、相手には相手の気持ちや考えがある、自分がそうされたいように、自分も相手を尊重する、と考えられるようになりました。そのおかげか、私もきょうだいも互いに仲良く話せるようになり、どちらが正しいか否かという不毛な戦いはなくなりました。

・心のゆとりが持てるようになった
発達の特性を考えると、本来の私は聞き上手というわけではありません。反面、人とのケンカがほぼなくなったことに加え、今の自分が多様な価値観やそれぞれの良さを見つめることができるようになったおかげか、心のゆとりが生まれました。以前の自分は、世界も人間も多様な価値観や考えから成立していること、それゆえに思い通りにならないのが普通であることを理解せず、変化を恐れました。そのため、私は正しさと言った揺るぎないものにすがりつき、思い通りにならないことでいらだちました。しかしそれは、自分も相手も苦しめていただけなのです。自分は自分、相手は相手だ、と思えることで、自分も相手も否定する必要はなく、自分も相手も幸せになれることに気付けました。

人に信頼されるようになった
発達障害で特にASDは、感情を汲み取ることが苦手な分、理論や合理性にもとづいた思考と行動を好みやすいです。私自身もそうですが、それは情に流されづらく、相手の話を冷静に聞けるという長所にもなります。情動的な共感がもっと欲しい!という方にはもの足りないのかもしれません。ですが、ASDであれば冷静に話を聞けるうえに、専門的な助言ができる知識の豊富さが役立ちます。おかげで、私にはネガティブな話題も安心してできる、と多くの友達や家族、知り合いは言ってくれます。さらに、自分と似たタイプだけでなく、むしろ好みや趣味が正反対でも信頼できる友達も増え、世界が広がっていきました。

聞く技術を実践しても、もちろん最初は上手くいかずに落ち込んだり、くじけそうになったりもしました。やっぱり発達障害で人の心が分からないと言われた私には、無理なんじゃ…と思うこともしばしばあります。それでもゆっくり時間をかけてもいい、他の人のように優れていなくてもいい、という思いで諦めませんでした。それに、人の心が分からないと言われても、誰かに優しくありたいと願った私が、相手とちゃんと向きあおうとしました。それは、「あなたに話を聞いてもらえてよかった」、という相手の喜びにも繋がりました。本来コミュニケーションが苦手な私でもできたのだ、という喜びと達成感にも繋がり、もっと頑張ろうという意欲も湧きました。

【発達障害の特性と課題】
では、聞く技術のおかげで成長したところも大きい反面、未だに苦戦していることや悩みもあります。↓

・感覚の特異性と注意力
発達障害の感覚過敏もしくは感覚の鈍さは、相手の言葉や表情、気持ちや意図を読み取るのを難しくします。私の場合、今は聞く姿勢を身につけたものの、聴き取りが弱いため、聞き間違いや聞き逃しが多いです。さらに、発達障害は目の前の景色や光、周囲の騒音、匂いや触感等、あらゆる刺激に注意をそらされやすいです。そうなると、相手の話を落ち着いて聞ける状態にはとてもなれません。私も人と話す時はレストランやカフェが多いですが、周囲の音が入ってくると、さいあく5割しか聞き取れません。そのため、わりと話の内容を聞くのが精一杯で、相手の表情や仕草、話すタイミング等に気を配る余裕はありません。そのため、会話の最中は相手に了承してもらったうえで、こまめな聞き返しや耳を近づける仕草を繰り返します。

・相手の視線や表情、仕草等、非言語的サインに弱い
人の話をだいぶ聞けるようになった今でも、私はけっこう集中していないと相手が話すタイミングを掴むのが苦手です。普段からも注意するようにはしていますが、相手の表情や目付きから疲れているのか、機嫌が悪いのか判別しづらいです。代わりに、「大丈夫?」と自分の方から確認する、「疲れたらいつでも休んでいいからね~」、と伝えるようにする、声で判断する等で対処しています。また、一般向け心理学の本を参考に、どういう仕草や言葉が機嫌を示すのかも勉強しています。私も、相手の表情や目付きをちゃんと見て相手を理解しているわけではないので、会話は不器用になりがちです。それでも、こちらが真面目に聞く姿勢にあることが伝われば、ほとんどの人は嬉しそうに話します。

・興味の幅がいまだ狭い、名前が出てこない
大人になった今の私は、なるべく色々なことに興味を持つようにニュースを見る、知らないことをネットですぐに調べる、教えてもらうようにしています。それでも、もともとそこまで興味を持っていないこと、人に言われて調べることは中々頭に入らないか、名前をすぐに忘れてしまいます。また海外にいた時期もあったので、日本の一般常識をそれほど知っているわけではありません。共通の話題や会話の広げた方は、いまだに私の課題でもあるので練習中です。

最後に~傾聴・継続は力なり~

いかがでしたでしょうか。発達障害を含む全ての方にとって、コミュニケーションを上手く交わすのに役立つ「聞く技術」について述べてきました。

自分が話すのではなく、相手の話を聞く姿勢を身に付けるだけでも、人との対等で穏やかな会話ができる、トラブルやストレスが改善できる、人に信頼されやすくなるメリットがあります。

発達障害の場合、コミュニケーションや感情・行動のコントロールの難しさ、感覚の特異性等のハンディがあるゆえに、私のように時間と労力、試行錯誤がかなり必要になると思います。

それでも、自分に無理をさせ過ぎない範囲で諦めずに、聞く姿勢を実践し、練習を積み重ねることが大切です。何よりも、ただ技術を強めるだけでなく、自分の気持ち、相手への思いやりが第一となります。

多少コミュニケーションや会話が不器用でもいいんです、聞き上手やプロの域に達する必要はありません。相手と対等で幸せなコミュニケーションが取れるようになりたい、人に優しくなりたい、大切な人のことを聞きたい。

あなたの真心が伝われば、相手もあなたを信頼して話してくれます。

どうか、自分を大切にしてくれる人、あなたが大切にしたいと思う方との幸せなコミュニケーションができますように。

参考文献
・東山紘久(2009)『プロカウンセラーの聞く技術』創元社

・岡田尊司(2016)『アスペルガー症候群』幻冬舎新書

・マクシーン・アストン(翻訳:テーラー幸恵)(2015)『アスペルガーと愛~ASのパートナーと幸せに生きていくために~』東京書籍

*Misumi*

*Misumi*

自閉スペクトラム症のグレーゾーンにある、一見ごく普通のネコ好きです。10代の頃は海外と日本を行き来していました。それもあいまってか、自分ワールドにふけるのが、ライフワークの一つになっています。好きなものはネコ、マンガ、やわらかいもの、甘いもの、文章を書くこと。最近は精神保健福祉士を目指しながらコミュニケーションを学び、今後の自分について模索する心の旅人。

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